入り口

はじめてプリザーブドフラワーにふれたのは、数年前に同僚の誕生日プレゼントのリースを作ったときだった。
仕事仲間はみんな、上下関係など意識せずともいられる気の置けない人ばかりで、自分にとっては家族のような存在だった。チームを離れた今も、彼女らへの想いは変わらない。

その月の誕生日の人に向けて、みんなから御祝のギフトを送ったりイベントをするのがひそかな楽しみだった。
受け取る人のパーソナリティーを考え、イメージにあったものをプレゼントできた時は、これまためちゃめちゃうれしい。

12月にお誕生日を迎える彼女は自分と年が近く、「見た目の華やかさ」よりも「質の良さ」を見抜く力があった。
それに花屋で働いていて、「リース」をもらうことってあまりないのじゃないかと思い、そうしようと決めた。
プリザーブドを選んだ理由は、いつも忙しい彼女の手を煩わせたくなかったことと、色合いを見たときに「これって生花だと出せない色。」と思える、まさしく彼女の好みに合いそうな花色の花材を見つけたから。

初めて作ったプリザーブドのリースは思ったよりも時間がかかってしまい、渡す時間に間に合うかとドキドキしたが、受け取った彼女の満面の笑みを見たときに「あぁよかった」とほっと胸をなでおろし、うれしくなった。

あの時は、今の自分の姿をまったく想像していなかったけれど、もしかしたらあれが入り口だったのかもしれない。

Life

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