卒業のタイミング②

もう辞めたいな、と思ったときに、空想することが度々あった。
夜中に突然ノートを開いて、「こんなことがしたい」ということを書き留めたりした。
その時はそれが支えになって、いつかこんなことができたらいいな、と思いながらノートを閉じて次の日また仕事に出かける。ノートの中の夢が、自分の心を逃がす場所になっていて、「いつか」という言葉が象徴するようにそれはかなえようと思って書いていたものではなかった。だけどその夢があるから現実を頑張れていたのだとも思う。

ところが後半はそれが逆転した。
仕事はもちろん大変なこともあるが、乗り越えられないというほどに「わからない」ということはなくなった。もちろん店舗があらたに出店したり、人員の確保・育成についての難しさは常にあったものの、初期のころに感じた絶望的と思うほどのことは起こらなかった。おそらく問題解決というところに対しては耐性がある程度できていて、そうはいってもあの時よりはずいぶんましだから大丈夫、と思う場面も増えたのだろう。


そしてある時、ふとこの日常を過ごすことが自分にとって逃げ場になりつつあることに気づいた。かなえるつもりもない「夢」と思っていたことが、ある時から現実にやるべきことになりかわっていた。だけどそれが怖いから見ないふりをして、今の現状にいる自分に気づいてしまった。「大変大変」と言いながら、実はすでに解決方法がわかっていて、だけどある程度のお給料もいただけて安全・安心を保障されている現状に甘んじている自分に気づいてしまった。その瞬間に、自分はこのままじゃだめだな、と思った。後輩に対して胸を張ってチャレンジしているといえないことが恥ずかしくなってしまった。そんな自分がどうしてみんなに「がんばれ」なんて言葉をかけることができるのか。そんな権利、今の自分にはない。そんな風に考えることもあった。

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