働き続けるわけ②
個人経営だとまた割合が違ってくると思うが、それでも花屋という職種は比較的女性が多い。
これまでいくつか勤めてきた会社(花屋)を振り返っても、どこも圧倒的に女性の多い職場だったと思う。
くわえて好きなことを仕事にしたい、お客様に喜んでいただきたい、というピュアな思いをもって入社する人が本当に多く、「長く続けられるから」とか、「くいっぱぐれがないから」とか、頭で考えるよりも直観的に感覚で、本能に従って選んできている人たちがほとんどのように思う。
だからなのか、本当に優しい人が多いし、人の気持ちを考えられる利他的な人がほとんどだった。人を優先させて自分のことを置き去りにしてしまう人も多くて、実はここだけの話働いていて私が一番心配だったのは、一緒に働く仲間のこれからの人生だった。余計なお世話と言われればそれまでのことだが、一生懸命にやっているひとなら、その誰もが明るい未来が描けるような職業にしたいと思っていた。
大きな会社になれば、店舗で働く以外にも様々な選択肢があるが、やはり直接お店に立ってお客様にサービスを届けることにやりがいを感じている人がほとんどだ。だから大体の人の望みとしては、結婚しても子供が生まれたとしても、それまでと変わらないキャリアを積み上げていきたい、というのが本音だったのではないかと思う。特にリーダーとしてチームをまとめる経験をした人にとっては、育児休暇を終えた後にまた同じポジションでやりがいを感じながら働きたい、という人もいたと思う。けれど「役職をもつ」というハードルはまだまだ高く、緊急事態がおこったときにサポートできる体制を確立することは容易ではなかったし、出産までは意欲をもって復帰を望んでいたけれど実際の子育てに携わったときに実感する、子供を持ちながら働くことの想像以上の大変さ、自分の意志だけではどうしようもないことがあるという事実に、当初とは違った選択をする人もいた。
退職の理由は様々だったと思う。
けれど、やりがいをもってこれまで積み上げてきたキャリアが、子供を産むというステージを迎えることによっていったんストップして、「両立」という課題のハードルの高さをまざまざと感じて、本当はそうあるべきではないはずなのに「どちらが大切か」という選択肢をつきつけられ、決断をする人もいたのは事実だ。
もちろん子育てをすることを心から楽しみ、チャンネルを切り替えて進むことができる人もいたので、全員がそうだったとは思わない。
けれど、出産を終えた女性が「好きなことをどちらも選択する」ということは、よほど周りの環境に恵まれていなければ難しいことで、やはり何かを犠牲にすることでしか成立しないのもまた事実だったと思う。