季節の上生菓子

ここしばらくは家にいることが多く、不思議なことにこれまでは人並みにあった物欲みたいなものもどこへやら、とんと影を潜めていた。
自分が欲しいものは、いまこの世の中のどこにも売っていないことがわかっていたし、なんだったら形がないものなので、自分で何とかするしかない。だから外に出ることも少し億劫な気がしていた。

それに今この期間は、まとまった時間をとることができる貴重な時なので、これまで考えてきたことを整理をする作業を主にして、情報を入れることを意識的にシャットアウトしていたように思う。最近になって少し頭の中が整頓されてきて、自分の中のアンテナがようやく動き出したような、何かをつかめそうな、そんな感覚を覚えている。

そんなタイミングだったからか、久しぶりに人がにぎわっている場所についと足が向いた。

ここ最近の暑さもあって、なにか涼を感じられるものをと思い、ふと和菓子屋さんに立ち寄った。
花も季節感を売るものだけど、和菓子屋さんの上生菓子の季節の表現にはいつも感動を覚えてしまう。小さな箱庭のような宇宙のような、なんと表現していいのかわからないのだけれど、あんなに小さいのに、ともすれば手のひらにすっぽりとおさまってしまう世界で、大きな自然を感じさせてしまうのだから、それこそ魔法かとおもうほど。

「紫陽花」。目にも涼しい色合いです。

「紫陽花きんとん」。キラキラしたゼリーがより透明感をひきたたせます。

優しい色合いが日本らしく、それでいて心が躍ります。
久しぶりにインスピレーションをくすぐられ、今日のお買い物は来るべくしてきたような気がする、と調子のいいことをぼんやりと考えてたりした。



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