働くようになってからわかったこと③
そんな風に、自分の知識や経験ではとても解決にいたらないと思うことにぶち当たったときに、父に相談することが多かった。
やはり親子とあり少し照れもあるので、心情的なところや自身の感情までを伝えることはなかったけれど、経験が浅く未熟なわたしにとっては強い味方だ。毎週土曜か日曜の午前中に、いつも散歩がてら孫の顔を見に来る父にそれとなく相談をした。特に実務的な面でのアドバイスを、父のこれまでの経験を交えておもしろおかしく話してくれるのが大変聞きやすく、それでいて勉強になることばかりだった。父の部下にあたる人たちにも、こんなふうな話していたのかな、なんて想像したりして、子供のころにはわからなかった父のこれまでの仕事の軌跡を見ているようで新鮮だった。そうか、なるほど。これが父の仕事だったんだな、と実感として理解した。そして決して形に残らないものだけど、一緒に働く仲間を助けることができたり、支えになることができるやりがいが、あの時の父の心を支えてきたものだったのだろう。そう、いまのわたしのように。
大人になり、社会に出て、父のあの時の気持ちや心の在り方を少し理解できたことはとてもうれしいことだった。
毎年父の日に何をあげたら喜んでくれるのか、いつも頭を悩ませていた。性別も違えばゴルフ以外の趣味もわからない父。ましてや買おうと思えば自分で何でも買うことができるだろう父に果たしてなにがいいのかは、本当に見当もつかなかった。
だけど、私自身の仕事内容の変化もあり、ここ最近父と話す機会が多かった。だからなのかはわからないけれど、今年送ったとびきりのトマトジュースはアタリだったようで、ものすごく喜んでくれたように思う。
初めて今この瞬間の父に喜んでもらえるものをプレゼントできたようで、幸せな父の日だった。